歯が自然に抜ける(歯周病の怖さ)

東京都武蔵野市 内山歯科医院
歯科医師・院長 内山博人

歯が自然に抜けると聞いて、「そんなことあるの?」と思われる方もいると思いますが、実際に歯周病が重度に進行すると、日常生活中に「自然に歯が抜ける」、あるいはその一歩手前の「歯がグラグラする」という状態になります。

この歯がグラグラするというのは、虫歯で歯に穴があいていくのとは全く異なる働きで進行してゆきます。虫歯菌は歯の表面に直接虫歯菌が住み着くことにより、歯そのものを溶かして蝕んでゆきますが、歯がグラグラになる原因は歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境界部分の溝に、汚れや歯石が慢性的に付着、停滞することにより、その中に含まれる歯周病菌が歯を支えている骨を溶かすことで進行してゆきます。

厄介なのはこの歯周病はある程度進行するまでは自覚症状に乏しく、症状が出る頃はすでに初期の状態ではなくある程度進行してしまっている状態に陥っていることです。硬いものがかみづらくなってきた、歯ブラシ時に出血する、鏡でお口の中をみると歯グキがやせてきていたりブヨブヨしている等の症状があればすでに歯周病ははじまっていると言えます。

歯の汚れは最初は歯周ポケットの比較的浅い部分にとどまり、歯ブラシでも比較的容易に除去できるのですが、歯ブラシが届きにくいところなどでは、その汚れが停滞したり、歯周ポケットの深部へ汚れが押し込められ、やがてそこで汚れが固まり、いわゆる歯石となります。この歯石は汚れが石灰化して固まったものなので、いわばバイ菌の巣窟の固まりのようなもので、この歯石が歯周ポケット内にとどまることにより歯を支えている骨を除々に溶かしてゆきます。この骨が溶けてゆく過程は、急激にある日突然溶けるのでなく、年単位で除々に進行してゆき、あり一定のレベルまで骨が消失した時点で、自覚症状となって現れます。前述した歯グキから血がでるだけでなく、腫れたり膿がでたりするようにもなります。消毒処置だけでは治まらず、抗生剤の投与が必要になるケースも多く、私が以前に勤務していた大学病院では歯周病菌の細菌感染が原因で蜂窩織炎とよばれる、顎全体や頬、首にまで炎症が広がってしまい入院して数日間点滴を余儀なくされたり、膿を出すため皮膚を切開しなければならいないケースの患者さんなどにも数多く接してきました。

どうすれば歯を支えている骨が溶けずにすむのか、答えは「定期的に歯石をとり、歯を支えている骨が溶ける前に歯周ポケットのクリーニングを行う」ことにつきます。よく歯医者さんで3ヶ月から6ヶ月おきに定期検診を受けましょうと言われることがあると思いますが、昔はいわゆる虫歯のチェックが主な目的でしたが、昨今では、歯の周囲の骨をとかしてしまう根本原因である歯石の除去と、歯周病の兆候症状の早期発見を主な目的としています。(もちろん虫歯のチェックも当然行いますが)この3ヶ月から6ヶ月の範囲で汚れを取り除いていると、骨を溶かすサイクルに入る前に健康な歯周ポケットの状態を回復することができるのです。

歯石がただ付着しているだけでは、なにも痛くも痒くないのですが、これを定期的に除去する習慣がないと、早い人で40歳代後半くらいから歯が抜け始め、50歳代から入れ歯になってしまう、などということが現実的に起きてしまうわけです。我々歯医者が自分達で歯を磨いていいても歯石は付着してきてしまいます。歯ブラシだけでは取り除くことのできない歯石を、定期的にとる習慣を身につけてはいかかでしょうか?まだ歯を失ってない方は、生涯自分の歯でおいしく食事ができますし、すでに入れ歯になっていらっしゃる方は、これ以上歯を失わず総入れ歯にならないためにも。

東京都武蔵野市 内山歯科医院
歯科医師・院長 内山博人

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