持病をお持ちの方

骨粗鬆症でお薬を飲まれている患者さん

骨粗鬆症の患者さんが歯科治療時に、特に注意しなければならないことは一昔前まではありませんでしたが、ここ数年、骨粗鬆症患者さんに処方されている「ビスホスホネート製剤」と呼ばれるお薬が、歯科処置時に重篤な副作用を引き起こす可能性があることがわかってきました。このビスホスホネート製剤は色々な名前で幾種類かあり、代表的なものでは、ゾメタ、ベネット、アクトネル、と呼ばれるものがあります。

毎日飲むタイプもあれば週1回、月1回だけ飲むタイプのものもあります。このビスホスホネート製剤の重篤な副作用というのは歯を支えている周囲の骨「歯槽骨」や顎の骨そのものを腐って壊死させてしまう「顎骨壊死」を起こすことです。ここ数年世界中のあらゆる医療機関から報告されるようになり、WHO(世界保健機関)や日本の厚生労働省からも注意勧告がでるようになりました。この副作用は通常の虫歯なのどの歯科治療では起こりませんが、多くは抜歯などの出血を伴う処置を行った時に発症します。最近わかってきた副作用のため、今なおその治療法や予防法が確立されておらず研究段階にあります。ビスホスホネート製剤を飲まれている患者さんすべてにこの副作用がでるわけではなく、発症率は0.05〜15%と報告によって様々です。しかし発症率は低いのですが、一度この「顎骨壊死」を起こしてしまうと、治癒するのがなかなか難しく壊死した骨が口腔内に露出したままの状態になり、食事や衛生面で非常に不便な思いをしなければならなくなり、また消毒のため頻回に歯科医院にも通院が必要になります。お薬の作用が長い期間体内に留まることが最近の研究で明らかになってきており、抜歯などを行う場合は最低でも3ヶ月間は、安全のためお薬を止めるのが望ましいとされています。

しかし歯が痛んで抜歯が必要な状態になってから、3ヶ月間も待つことは現実問題難しく、ビスホスホネート製剤を飲まれている多くの患者さんはこうしたリスクを承知の上で歯の処置をしなければならなくなります。整形外科などでこの「ビスホスホネート製剤」を処方されている患者さんは、歯科受診の際に必ず申告してください。また癌など一部の悪性腫瘍の患者さんの骨転移の治療薬としても使用されていますので、こちらも同様に注意が必要です。

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